井上明彦、ヒスロム「新シク開イタ地」|Inoue Akihiko, hyslom

神戸アーティストビレッジ|Kobe Artist Village
Feb 25 - Mar 6, 2016

















「旧湊川を埋め立てた土地が「新開地」と呼ばれたとき、詩人竹中郁は「ヘンな名だなあ」と感じたという。「新しく開いた地」が固有名詞として定着し、今の地名がある。このプロジェクトは竹中郁の違和感に立ち戻ることから出発する。「地が新しく開く」とはどういうことか。それは無人の大地に人が住み始めるときの光景を想像させる。人の住めない大地の一部が開発と所有を経て人の住む土地になる。逆に巨大災害を経て土地は大地に戻る。そもそも「地」とは何なのか。『創世記』には、大洪水から箱船で逃れたノアが、水が引いて地が現れたかを知るために鳩を放つ逸話がある。鳩がくわえてきたオリーブは地の出現を告げた。今、太平洋上の西之島は、大陸地殻をつくる安山岩マグマを噴出し、大陸誕生という原始の地球の姿を彷彿させる。太陽系で唯一海と陸を持つ地球の上では、地はつねに流動している。鳩は「新シク開イタ地」を見つけるだろうか。私たち人類はそこに住むことができるだろうか。
"Exhibition as media 2015 - 2016"では、創立20周年を迎えるKAVCの位置する「新開地」そのものをテーマに、「土地」とは何かを美術を通して考えます。」(展覧会テキストより)