長島有里枝「縫うこと、着ること、語ること。」

Nagashima Yurie
デザイン・クリエイティブセンター神戸|Design Creative Center Kobe
June 17 - July 23, 2016










「作品について

本展は、2016年3月に東京のMAHO KUBOTA GALLERYで発表された、長島が自身の母親とテントを共作する作品の姉妹版となります。神戸では、長島の私生活のパートナーのお母さんと、タープ(日よけ)を制作しています。また、タープの素材となる古着を提供してくださった神戸市内に在住/在勤する女性たちのポートレイトや、神戸で暮らすなかで出会い、撮影するに至った風景や人々の写真も併せて展示されています。

親密であるがゆえに、ときに大きな負担にもなりうる母娘という関係性を、作品制作という非現実的な行為を通じて変化させようと試みたのがテントのインスタレーションであったのに対し、タープを中心に据えた今回のインスタレーションでは、新しい女性との出会い、関係性を深めることがテーマとなっています。

パートナーとの会話から、長島は彼の母が自身の母親と同世代であること、女子校から洋裁学校、デパート勤務を経て、パリでお針子になるという夢を結婚前に抱いていたことを突き止めます。そのライフコースは、偶然にも長島自身の母親とまったく同じものであったため、長島は彼の母親に強い興味を抱きます。また、神戸はパートナーの故郷であり、実家のある街でもあります。偶然に偶然が重なって、滞在制作のタープは生み出されています。

タープはテントと同じくキャンプ用品のひとつで、しばしばテントの前に広げる日よけとして使われます。守るための構造が、外部から疎外された空間を生み出しもするテントと異なり、タープは外との境界線があいまいで、開かれた構造を持っています。どちらも、強烈な日差しや雨風を防ぐシェルターの役割を果たしますが、そこには歴然とした違いがあります。テントが、母娘のあいだで共有された家族の秘密を囲い込んで守る意味合いを持つのに対し、タープは開放的な新しい場で、守られつつも自在に外と繋がることができる喜びを示唆します。

テントの素材が、作家の家や実家でかき集めた家族の古着や古布だったのに対し、タープの素材は神戸在住の女性たちから譲り受けた古着です。古着を受け取る際に長島は、もう着ないにもかかわらずそれを処分できないでいる理由を持ち主から聞き取り、その物語からインスピレーションを得て、古着を身につけた女性たちのポートレイトを撮影しました。当初はコンセプトを立てておこなわれていた撮影も、滞在期間が長くなるにつれてその枠組みを超え、撮りたい欲求や関わりたいという欲望に忠実なスナップ写真へとシフトしていきました。

タープの制作中、長島は共同制作者である津喜美さんの自宅に滞在しています。その間のやりとりにはパートナーを介さず、すべて直接行われました。家族という集団において、女性は男性を介在して出会うのが常ですが、「わたしたちのあいだにはそのような副次的な関係から逸脱した関係が生まれた」と長島は言います。津喜美さんが工業用ミシンを駆使して縫い合わせたタープの緻密な手仕事は、タープの一番の見どころともなっています。」(展覧会テキストより)