VIVA-EXCON Capiz

11/9-11/11/2018
フィリピン・カピス州ロハス市

VIVA-EXCON(the Visayas Islands Visual Arts Exhibition and Conference)は、アーティスト・コレクティブ「Black Artists in Asia」によって1990年に創設されて以来、フィリピン中部に位置する群島地域、ビサヤ地方を移動しながら隔年開催されてきた。開催地となる都市のアーティストが独自の企画・運営チームを結成し、他都市から参加者を迎え入れるのだが、ビサヤ地方の作家の展覧会と各地域の現状を報告する「アイランドレポート」を核とする会議という2本の柱によって毎回構成される。ファックス、スライド、プレLCC時代の設立当初とは比較できないほど、今日ではその規模が拡大しているが、アーティストのためのアーティストによる催しとしてのスピリットは今も変わらない。


14回目となった2018年は、創設メンバーの一人である、ノルベルト・ピーウィー・ロルダンがディレクターに任命され、彼の故郷パナイ島カピス州ロハス市で開催された。総勢400人を超える参加者を迎えいれ、展覧会と会議、ライブパフォーマンスで盛りだくさんの3日間であった。今回の企画のテーマ「ルーツに還る」の下に、地域内で活動する作家以外にも、国内の他地域や国外を拠点にアートシーンの第一線で活躍するフィリピン人作家による作品展示や、国内外のアーティストやキュレーターと、地元のアーティストによるコラボレーションのプロジェクト、カンファレンスの各パネルには2人以上の海外からの実践者が登壇するなど、国際色の効いた構成であった。


実は、1992年の開催以降、VIVA-EXCONではビサヤ地方のアーティストに参加が限定されてきた(外部からは観客のみ)。30年近い歴史を誇るにも関わらず国外での認知度が低いのは、この企画方針によるのだろうと推測されるが、そのおかげで「自分たちのフェスティバル」というオーナーシップの意識が共有され、手持ち弁当の運営でありながらも、長期間の継続を果たしてきた。そのため、外部からの参加者を多数入れ込んだ今回のフェスティバルは、VIVA-EXCON史上、異色の企画といえるだろう。筆者は今回が初めてのVIVA-EXCONへの参加だったが、会議での参加者の発言やその合間の立ち話から見えてきたのは、マニラとは異なる複雑な社会問題を抱えるビサヤ地方という文脈から、率直にアートの社会的役割とその存続について語り合い互いをサポートする「同志」の「コミュニティ」として機能しているということだ。コミュニティは内と外の境界線によって形作られ、「I」ではなく「we」として語られる。

会場での歴史家セシル・ナバ氏とロルダンのやりとりが印象に残っている。ドゥテルテ政権下で起こっている超法規的殺人と人権の侵害は、VIVA-EXCONが開始した時代とシンクロしているとの導入から、設立背景にあった思想についてロルダンにマイクを傾けた。妥協を許さない信念によって、VIVA-EXCONから長年距離を置くことになった創立メンバーの一人への敬意が込められた質問だったように思われる。それに対して「継続」が自明のステートメントだというロルダンの返答には、人称代名詞が使われていなかった。個人の信念と「コミュニティ」の複雑な関係を暗示する感慨深い言葉であった。

12.10.2018(平野真弓)