作・演出 筒井潤
2015年12月30日・31日、2016年1月2日・3日
アートスペースジューソー/#13

2015年12月30日・31日、2016年1月2日・3日
アートスペースジューソー/#13

登場人物は5人。彼らは同時に現れるが、互いに言葉を交わすことはない。5つのモノローグでストーリーは運ばれる。大晦日。床に倒れ伏している二人姉妹。妹は反応しない姉に繰り返し無感情に問いかける。「鐘の音聞こえる?」「ところでもう年越した?」。屍体のような女の身体から発せられる声はあまりにも透明で、脳裏にこびりついて離れない。彼女たちの両親は家と土地と借金を残して突然亡くなった。幾度となく手紙を配達に来る「執行人」と呼ばれる男は、彼女たちの家のガスも電気も止められ、異臭を放っていることを「行政窓口」の男に報告するが、「行政の窓口」は「彼女たちが助けを求めてやってこないから。残念だ。」とつぶやくばかり。「質の良いマンションを建てて借金を返済しよう、難しいかもしれないけれど、皆そう考えている」と嗾ける銀行員の男。「お宅はどうやって大晦日過ごしてる?」と問う主婦。戦後復興を目指す国民的希望の象徴だった紅白歌合戦は、高度経済成長を経た今日の社会の倦怠感と孤立の隠喩として用いられている。絶望。若くて肉付きの良い女の身体からは生気が消失している。私は彼女たちが倒れている床に座っていて、脚を伸ばせば身体に触れてしまう距離にいる。彼女たちは死んでいるのか生きているのか。いつ年が変わるのか、死ぬ瞬間に何がおきるのか。ふたつの時間と空間はどのように決定されるのか。妹の手からこぼれた5円玉が床を打つ音でふと我に返った。